地球の年パス「アースホッパー」が描く、自然のフィールドと人間の関係性(後編)

by flumen編集部
地球の年パス「アースホッパー」が描く、自然のフィールドと人間の関係性(後編)

全国30のスキー場定額パスとして、2021年冬に発売した「アースホッパーSNOW」。

2シーズン目となる今年は、サービス名称を本来目指していた「アースホッパー」に変え、スキー場のグリーンシーズン営業強化を後押しするようにオールシーズンに広げて展開する。

提供元の株式会社Pioneerwork(パイオニアワーク)は、自社を「アーススポーツカンパニー」と定義する。旅するように自然のあるところへと出向き、“地球と遊ぶ”アーススポーツ。それを単発のレジャーから持続的なライフスタイルとして楽しんでいける人を増やすため、共通パスという形で道筋を示すのがねらいだ。

テーマパークに年パスがあるように、アースホッパーは「地球の年パス」なのかもしれない。エクストリームなスポーツから、その入り口となるライトアクティビティまで。地球というフィールドで遊び尽くす中で自分の「進化」を感じてもらい、パスからプラットフォームになっていくビジョンを描いている。

アースホッパーがどこを目指しているのか聞くと、話題はアニメ・ドラマやレジャー施設といったエンタメ、そしてメタバースと地球環境のことへ。前編に引き続き、アースホッパーの描く世界観を後藤陽一氏 @YoichiGoto に聞いていく。

【前編】スキー場もサブスクで楽しむ時代へ。全国30スキー場定額パス「アースホッパー」に迫る

後藤 陽一(ごとう よういち)/ 株式会社Pioneerwork 代表取締役
京都大学工学部卒業後、同大学経営管理大学院修士課程およびスイス・ローザンヌ大大学院にてスポーツマーケティングを学び、2011年株式会社電通入社。地方テレビ局、自動車メーカーを担当後、電通総研にてエクストリームスポーツ特任リサーチャーとして、企業や自治体のアドバイザリーを手がける。国連世界観光機関(UNWTO)パネリスト(2015)。
2014年より、スイス・ローザンヌに本部のあるフリーライドスキー・スノーボードの国際競技連盟Freeride World Tourのアジア地区統括。長野県白馬村へアジア初の大会の誘致に成功。4年で4道県で11のイベントに300人の日本人選手が参戦するツアーに成長させる。


アーススポーツは、人間が進化していく喜びを感じる手段

これからのアースホッパーは、グリーンシーズンも含めた新しい遊び方を提案していく。もっともっと、地球には楽しい遊びがたくさんある。四季を通してアーススポーツを楽しめる人を増やしていくことが当面の目標だ。

──ユーザーにもっといろんな季節、いろんなフィールドで遊んでほしいと思うようになったのはなぜですか?

知り合いのヨーロッパの山岳リゾートコンサルタントが言うには、スノーリゾートの課題は世界共通で大きく2つあると。ひとつは、全くスキー場に来たことがない人に来てもらうこと。そしてもうひとつは、スキー場に来た人にスキーや山岳リゾートの遊びに楽しみを見出してもらい、ライフスタイルに昇華させて生涯楽しみ続けられるように促していくこと。この二段構えなんだけど、日本で2つめのほうを考えて活動している人はまだいないなと思って。

──続けさせる仕組み、みたいなことでしょうか。若い頃にスキー場に行ったことがあっても、やがてみんな辞めてしまいますもんね。

アーススポーツの魅力は自分の「進化」が感じられるところだと思っていて。本来は50歳、60歳になっても続けられるスポーツなのに、継続して楽しませるためのルートができていない。

今スキー場がグリーンシーズン向けにテラスを作ったりしているけど、観光地としては楽しくても、テラスに行ったところで進化はしていかないよね。岩岳のテラスに行ったから次はトマムのテラスに行こうかなって、テラス巡りみたいにはならないじゃん。

──テラス巡り(笑)

でもスキーなら、上手くなれば一個上のリフトに行けたり、滑れるコースが増えたり、遊び方が進化していく。行くたびに天気も違うし、レベルが上がれば付き合う人も変わって、いつまでも新しい体験がしていける。

昔はスキー検定で級が上がることで進化が実感できたり、地域ごとの山岳会が道筋を示してくれたりする文化もあったけど、今はまた状況が違う。一度来た人にスポーツやライフスタイルとしての楽しさに気づかせてあげる仕組みが必要だと思う。

──その仕組みづくりを担うのがアースホッパーなんですね。

そこまでやりたいね。今はまだスキー場の共通パスに見られていると思うけど、自分のレベルが上がっていく喜びを感じてもらえるように、進化をプロデュースするところまでやっていきたい。


道具と知識を使って、EARTH(地球)を攻略する

──今のアースホッパーはスキー場共通パスとしての価値が大きいですが、どうやって進化をプロデュースしていきますか?

進化といっても、ひとつのスキルを縦に伸ばしていくだけではなくて、横に繋げていくことでもいいと思っていて。夏のアクティビティも含めて、いろんな体験をする回数が増えていけば、相乗効果で自ずとその人なりの次のステップが見えてくるんじゃないかな。

自然の中で遊ぶには生身の人間だけでできることは限られていて、スキーの板を履けば雪の上を滑れたり、マウンテンバイクに乗ればママチャリでは行けないところまで行けたりと、道具と知識を身につけることで未知の世界を見に行ける。それがアーススポーツの本質だと思っているんだけど、道具はアーススポーツ間で共通して使えるものも多いから、ひとつだけじゃなく新しいものにもチャレンジしてみてほしい。

道具を使って、どこまでも。

──道具の進化によって、遊び方も増えましたよね。

道具の進化はかなりすごい。スキーならテックビンディング、スノーボードならスプリットボード、サイクリングは電動自転車が出てきて、ウェアも多機能なものが増えてるよね。GoProやスマホの進化で得られる情報もかなり多くなった。これだけ前提が変われば、昔と比べて遊び方のバラエティが増えていないとおかしいくらいだよ。

──たしかに、自然を相手にした遊びを取り巻く環境は、ここ数年でかなり変わってきていますね。

EARTH(地球)を攻略しようと思うと必ずリスクが出るわけですよ。そのリスクを軽減するためには、道具と知識が必要。その道具と知識のレベルが格段に上がっているということは、今まで攻略できなかったようなところまで足が伸ばせる。アーススポーツをやるための環境は、かなり整ってきたんだよね。

──攻略できるフィールドが広がると、人はもっと遠くへ出かけていくのかも。ゲームの世界みたいに。

その通りで、アーススポーツと旅や観光はセットだという話をしたけど、地球と遊ぶには常に自分から自然のほうへ出向いていく必要があるんだよね。自分の町にチームが来てくれて近所のスタジアムで観戦できるサッカーのような競技と大きく違うのはそういうところ。

だから道具と知識を使っていろんな季節に遊ぶことで、攻略できるフィールドを増やしていって、それぞれの進化を感じてもらうというのがアースホッパーがやりたいことかな。


ライバルはNetflixやUSJ。新しいエンタメを提供したい

アースホッパーは、アーススポーツを軸に、地球を攻略するという新しい遊びを提供している。競合するサービスはあるのか? と聞くと、直接的にはほとんど存在しないものの、「エンタメ」はすべて競合だという答えが返ってきた。

──エンタメとアーススポーツは、どういう関係なんですか?

アーススポーツも、余暇を過ごすという意味では「エンタメ」の一種だと思っていて。今ってNetflixとかが何千億円もかけて日々新しいコンテンツを出し続けていて、我々消費者は「新しいエンタメ」を浴びるように提案されることに慣れきってしまってる。アーススポーツも新しい楽しみ方をどんどん投入して、欲望を刺激してあげないとダメだと思うんだよね。

地球と遊ぶことは最高のエンターテインメント

──たしかに。スマホの中にあるコンテンツで満足できる時代に、アーススポーツを選んでもらうには、新鮮さが必要ですね。

USJにしても、マリオのエリアを作ってみたり、ハリーポッターの世界を再現してみたり、先行投資してどんどん新しいものを提案してるよね。頑張って新しい遊びを作って、提案したら話題になって、それでお客さんが来て利益が出て、また次の年に投資ができて。

あれだけの施設でもそれを絶やさずに循環させているけど、今スキー場はそれが逆回転しちゃってる。お金がなくて先行投資できなくて、新しい遊びがないからお客さんが来なくて、またお金がないという。

──そこが回転し始めれば、自発的に新しいコンテンツが作れるんですかね。

作れると思う。アースホッパーのコアなユーザーたちにまず提案して、そこをきっかけに回り始めるといいね。

自分の周りを見ていると、スノーボードもサーフィンも自転車も、複数楽しんでいる人ばかり。アクティブな人たちは新しい遊びにどんどんトライしていくから、きっかけさえあれば新しい何かをやると思う。需要があるとわかれば、スキー場も一緒に進化して新しいエンタメを生み出していけるかもしれないよね。


「壁の向こうが見てみたい」 人間の根源的欲求

──「地球を攻略する」という話がありましたが、なぜ人間は地球を攻略したいと思うのでしょうか。

某漫画じゃないけど、壁の向こうを見てみたいみたいな気持ちと同じなんじゃないかな。結局、人が旅行するのだって新しいものを見たいからだし、スポーツで勝てなかった相手に勝つとか、ゲームでレベル上げたら使える武器が増えるとかさ。知らない世界を見に行きたいんだろうね。

──逆にそういう日常的な楽しみもあるなかで、わざわざ早朝から重い荷物を背負って一生懸命に地球を攻略しに行くアーススポーツには、もう一歩何かある気がするんですけど。

俺はバックカントリースキーに初めて行ったときの衝撃が強くて今やってるんだけど。やっぱり、あるラインを超えたときの感動は強烈な体験にはなると思う。人間が誰も入っていない静寂の雪山で、「こんなところ行っていいんだ」という開放感と、溢れ出るアドレナリン。ああいう体験を一度してしまうと、その先が見たくなるよね。

今までの人生でやったことのない体験をして本能が呼び覚まされるような感覚は、理由を考えるまでもなく全人類にあるという前提でやってる。それがスキーじゃないかもしれないし、バックカントリーに行く遥か手前でその感覚を迎える人もいると思う。新しい世界が見えたときの「えっ、こんなことできるんだ!」というのが、レベルやシチュエーションは人それぞれでも、絶対、誰にでもあると思う。

──本来の人間らしさを取り戻していくみたいな。

いろんな遊びをしながらアーススポーツの階段を登っていって、その人なりのブレイキングポイントにぶつかるまで進化させてあげたい。あるラインを超えるまで持ち上げてあげられる仕組みができると、スキー場や地域にもお金が落ちていくと思うんだよね。ボトムを広げていくのが、これからのチャレンジだね。


人類がメタバース空間に移り住んでも、たったひとつの地球は守りたい

私たちは地球に生まれた人間である以上、アーススポーツを通して生まれたフィールドを攻略していくことに、快感を覚えるのかもしれない。そんな着地点が見えてきたところで、話は思わぬ方向へ。

──人間にとって、自然との接点は欠かせないのですね。

そう思う。だけどこないだ誰かが言ってたんだけど、将来的に人間は7〜8割の時間をデジタル空間で過ごすことになるんだって。矛盾するようだけど、それはそれで納得感があるわけよ。

──メタバース?

そう。仕事も含め、デジタル空間に移行していくと。たしかにそうなるんだろうなと納得しつつ、逆に言えば残り2〜3割のリアル空間で過ごす時間が、もっと大事なものになるなと思ってさ。

ベンチマークしているアメリカのOutside Inc.っていうアウトドア企業の社長が、「地球人全員がメタバース空間に入ったとしても、リアルな肉体が存在する地球は一個しかない」というようなことを言っているんだよね。地球が気候変動でやばい状態になっていくときに、たったひとつの地球が滅んでいくのを黙って見ているだけでいいんですか、と。

Outside Inc. 公式サイトより

──それがアーススポーツやアウトドアアクティビティと繋がっていくと。

彼は、人類が自然の近くで過ごす時間を増やすということが、気候変動と闘うのに必要条件であると言っていて。まだ彼ほど高い視座は持てていないかもしれないけど、Pioneerworkも「人と自然をアーススポーツで繋ぐ」ことをミッションにしてやっている。

──自分で見て知って、リアルに体験して肌で感じないと、環境問題にしても何のアクションも起きないですもんね。

自分たちが食べるものも、地球からもらってるわけだしね。メタバース空間で1日の大半を過ごすようになっても、基本的な人間らしさの部分を忘れないようにしたいよね。自然の中で遊ぶっていうことが、そういうマインドにも繋がっていくと思うんだよね。

テーマは“地球と遊ぶ人”へ

──わかります。そういう話を聞くと、シーズン2が楽しみですね。来季、仲間になってもらいたいのはどんな人たちですか?

来季はもう少しライトな層にも使ってほしい。「スキーは3回ほどしか行かなかったけど、夏にマウンテンバイク、秋にキャンプをして、あと2回くらいスキーに行けば元が取れるかな」くらいの人にも楽しんでもらえるようなサービスにしたいと思う。

──まだ入っていないスキー場さんやグリーンシーズンの事業者さんも興味を持ってくれるといいですね。

ご連絡お待ちしてます。マウンテンバイクの事業者は、スノーボーダーが来てくれたらとても嬉しいと言ってくれます。しっかりデータも取って、コースやイベントの設計にも落とし込めるようにしていきます。

アースホッパーのユーザーは、自分が楽しみたいという以上に、運営と同じ目線でこの領域をよくしていこうという熱意を持ってくれている人が多いんです。彼らの声を反映させて、日本のアーススポーツをもっと面白くしていきたいと思っています。

・・・

グリーンシーズンのコンテンツも加わり、ますます遊びの幅が広がりそうなアースホッパー。まだ交渉中の施設もいくつかあり、リリース後も随時増やしていくことを発表している。冬まではまだまだ長いけれど、今年はちょっと早めに遊びはじめてみるのもいいかも。

【前編】スキー場もサブスクで楽しむ時代へ。全国30スキー場定額パス「アースホッパー」に迫る

アースホッパー公式サイト https://www.hopper.earth/

アースホッパー公式SNS TwitterInstagramFacebook

プレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000058215.html


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