241MAGAZINEと語る、Z世代・ミレニアル世代スノーボーダーの生き方とキャリア観(後編)

by flumen編集部
241MAGAZINEと語る、Z世代・ミレニアル世代スノーボーダーの生き方とキャリア観(後編)

「横乗りライフスタイルマガジン」として独自のスタイルでスノーボードやサーフィンのことを伝える新星Webメディア、241MAGAZINE

運営する @241_takahiro は、現在はリモート会社員として働きながら白馬と湘南の2拠点で暮らし、スノーボード、サーフィン、スケートボードの3Sを惜しみなく楽しむ30歳。ノルウェーで滑ったり東京のスタートアップ企業に勤めたりしてきた過去をもち、怪我で滑れない期間も長かったことから、スノーボーダーとしての生き方を人一倍模索してきた。実体験を通して育まれた深いスノーボード観を、メディア運営のスタイルにも反映している。

前編では、241MAGAZINEを始めた経緯や現在のスノーボードメディア業界について思うことを聞いた。トークの後半では、ライフスタイルと滑りのスタイルの相関性、海外と日本のスノーボーダーのキャリア観の違い、今テキストメディアをやる意義の話に。

“ライフスタイル”という言葉の本質に迫り、これからの世代の生き方やキャリアにも通じるトークとなった。

【前編】「手の届く横乗りライフスタイルを伝えたい」241MAGAZINEに聞く、スノーボードメディアの今とこれから

ノルウェーで見た、新世代のスノーボードとの向き合い方

RY:「横乗りライフスタイルマガジン」というタイトルだけど、“ライフスタイル”という言葉に、それ以上の何かが込められていると感じたな。もう少し詳しく聞いてみたい。

241:スノーボードのことだけじゃなく「ライフスタイル全体」にした背景としては、自分の経験が大きく影響してると思う。俺自身がずっと「スノーボードだけで食べていきたい」と思ってて、ノルウェーにも行って足掻いたりしてみたけど、自分の技術ではどうやってもそこには行けなくて。

ノルウェーで滑っていた頃

でも海外で滑ってると、自分なんかよりもアホほど上手いヤツがスノーボードだけで食うのを目指してないっていうか、そもそもそこをゴールにしてなかった。他の仕事や活動を全力でやりつつスノーボードも高いレベルで楽しむ、という考え方のほうが一般的で、そういう人にたくさん出会ったんよね。

RY:どんな活動をしている人がいたの?

241:ノルウェーで、有名なCAPiTAのガールズライダーの子と仲良くなったんやけど、バスの中でずっとメモみたいの書いてるから「何してるん」て聞いたら、「警察学校の勉強」て。へえそうなんや、スノーボードで食ってるんやと思ってた、て言ったら、スノーボードで食べていくのも素敵だけど私は警察官としてやりながらスノーボードもしたい、って。結構それはマジかって思って衝撃やった。

RY:スノーボードで稼げないからというわけではないんだね。他にもやりたいことがあって、目指す生き方の中にスノーボードが入ってる感じ。海外はそっちになってきてるのかな。

241:そうそう。自分が若いときにそういうこと教えてくれる人あまりいなかったなと思って。スノーボードで食えるようになることが正解だと信じてもがいてた時期もあるからさ。

スノーボード1本で食わなくてもいい。若手世代のキャリア観

RY:ライダーひと筋で幼少期からやってきました、ていう人もかっこいいけど、遠い世界だもんね。

241:それより、ライフスタイルの一部として楽しみつつ上手くなってここまで来ました、て人の話のほうが、まだ再現性があるやん。共感できるというかさ。

RY:その仕事1本で生きていくことだけが正解じゃないのって、なんか今っぽいよね。会社員にも通じるけど、ひとつの仕事だけを極めるよりも、副業でこれもやってるんですとか、自分でこんなものも作ってるんですとか。

241:シーズンによって全然違う仕事やってたりな。

RY:今は趣味から副業に発展したりもするし、スノーボードも「趣味」と「仕事」の中間みたいになっていくのかも。ライフワークって言葉も近いかな。海外のライダーはそういうのも進んでいそう。

241:日本はプロ資格とかショップライダーとか肩書の形がいろいろあって、特にスノーボードブーム全盛期からその後の2005〜2010年頃は、多くの人が夢を見たんじゃないかな。「自分、スノーボード1本でいけるんじゃないか」と思えてくる。

でも海外だと肩書がどうというより、お金がどれだけもらえてるかでシンプルに判断する考え方だから、スノーボードをライフスタイルの一部に取り入れてトータルで楽しむ発想になりやすいんだと思う。結局そういうほうがかっこいいし、長く続けるにはいいんだろうなという価値観に俺は今なってきてて。

RY:日本も今の若い世代は変わってきてる?

241:学生時代にスノーボードサークルをやってたりもしたから、今でも大学生の子らと滑るけど、めちゃくちゃ上手い子ほど学業との両立を大事にしてるかも。今はいろんなマネタイズの方法があるから、上手くなってYouTubeやSNSでバズって収入を得たりというのも主流なのかもしれんけど、そうじゃなくて。全然別の仕事を目指しながらライフスタイルの中にスノーボードを組み込んでいくことに憧れる若い世代も増えてる気がするな。

学生時代に立ち上げたスノーボードサークルShuffleのメンバーと

RY:スノーボードが好きだからスノーボードメーカーに就職する、みたいな価値観でもなさそうだよね。

241:スノーボード業界に携わりたい!と思ってブランドやメーカーに入っても、直接的な仕事だからこそ、既成概念を壊すのはなかなか難しそうだなと感じることはあるね。それよりも一見関係ないようなキャリアから入った人が、フラットな目線でイノベーションを起こしてたりする。そうやってどうにかして関わりを模索している人が俺には魅力的に見えるな。

RY:若い世代でスノーボードをライフワークにしてる人って、本業を聞いてみるとコンサルですとか自分で事業やってますとか、すごく優秀な人も増えている気がしない?

241:それはかなりある。雇われてても家業でもいいんやけど、何か別のことをやりながらのほうが、気づくことや見えることもあるんやろね。スノーボード1本よりも視野が狭くならないし。

ライフスタイルは滑りのスタイルに必ず出る

RY:私もFWQ(運営に関わっているスキー・スノーボードのフリーライド大会)の選手たちを見ていて思うんだけど、そういうライフスタイルが、滑りのスタイルにも反映されたりするのかな?

241:……するどいですね(笑)。まさにそうで、昔ショップの店長に「スノーボードのスタイルはライフスタイルがそのまま出るから、ライフスタイルをちゃんとカッコよくすることが滑りのスタイルを出す一番の方法やで」てよく言われてて。ライフスタイルがイケてなかったらスノーボードでイケてるスタイルを出すこともできないって話はよく言われてることなんよね。

RY:たしかに、そんな気がする。

241:ほんまにそうなんよ。スノーボードのスタイルがかっこいい人って、背景見てみたらライフスタイルもめちゃくちゃかっこいい。たとえばFWQに出てる美谷島豪くんとか、滑りがかっこいいから普段何してる人なんって見てみたら「自分で養蜂園やってます」って、おおかっけえな、みたいな。

RY:かっこいいよね。しかも蜂蜜のクオリティもめちゃ高い。

スノーボーダーとして活動しながら養蜂園を営むライフスタイル

241:そうそう。結局、生き方とかやってることは全部、滑りに出るんよ。昔スノーボード1本でブイブイ言わせてた人が、年齢重ねてライフスタイルを変えていって、そっちを充実させることでスノーボードにまた磨きがかかっていくパターンも結構あるように見える。今の若い子らはそういう人たちが作ってきた道を見れるから、まだ将来が想像できたりするけど、俺の頃はライフスタイルを見せてくれる人がまだそんなにいなかった。

RY:キャリアでいう「ロールモデルがいなかった」みたいなことだね。

241:だからスノーボードを続けるにしても会社に勤めるにしてもバランスが難しくて、たくさん悩んだ。そういう意味だと、30歳になった今やからこそ発信できるようになったことなのかもしれない。

思想やマインドセットこそ文字で伝えたい

RY:241MAGAZINEが考える「ライフスタイル」と「スノーボード」の関係、他のアスリートや、人生設計に悩む若者にも役立ちそうな話だね。記事を作るうえで、気をつけていることはある?

241:再現性のある記事をというところにも繋がるけど、リアルな体験や自分で聞いた話を書くのは大事にしてるね。大会も全部、身体張って出て書いてるし。俺の中では、30歳になってもまだこんな滑ってるヤツいるんですよっていう、スノーボーダーとしての自分自身を見てもらう場でもあるんよね。リアルさを大事にしたくて。

RY:名刺代わりのブログみたいな。

241:それそれ。俺の技術って正直たいしたことないし、勝ち目ある大会に出てるかって言われたらそんなこともない。だからブログ全体を見て「こんなヤツもいるんやな、もう少し頑張ってみようかな」と思ってくれたら俺は嬉しい。

RY:一人ひとりのインタビュー記事で伝えたいことを、ブログ全体としても自らコンテンツになって発信してるんだ。発信するようになって、嬉しい反応や変化はあった?

241:大会とかで声かけてもらえることは増えたね。自分で「241MAGAZINE」のデカいステッカー作って板に貼ってるから、うっすら知ってくれてる人が「あの記事面白かったです」とか「ああいうのこれからも続けてください」とか言ってくれる。

RY:それは嬉しい。

板に貼った大きなステッカーが目印

241:この前、小学生の子供がフリーライドの大会に出てるっていう親御さんからInstagramでDMをもらってさ。「ライダーとして大切なマインドセットを241MAGAZINEを通して学ばせてます」って。スノーボードに向き合う姿勢とかを息子に伝えるのに使ってくれているらしい(笑)。

RY:すごいね、どの記事が刺さったんだろう?

241:岡山で消防士してるカケルってヤツがいてさ。そいつは自分がスノーボード上手くなるためなら移動時間をまったくいとわずに、どこにでも行くんよね。8時間運転しても行くし白馬にもすぐ来るし。ライダーとしてそういう行動量が大切っていうインタビュー記事を書いたんやけど、それを親子で読んでくれたらしい。

深堀りするインタビュー記事に力を入れている

RY:なるほどね。滑りの技術は映像からいくらでも学べるけど、思想やマインドセットみたいな部分って、やっぱり文字が伝わりやすいよね。みんなが何を考えてスノーボードに向き合ってるか、横乗りのどんなところに魅力を感じているかって、意外と知れる場所が少ない。

241:ほんまにそうだと思う。文字ならずっと残るし。だからブログでやってるのかな。

RY:教材としても役立つ241MAGAZINE(笑)。

241:実は教育系コンテンツだった(笑)。

RY:いや、でも本当に、スポーツとしてのジュニア育成という視点で考えると、親が子どもにモチベーションを保たせるためのコンテンツが足りてないのかも。すごい有意義なことをしてるよ。

日記でも70点でもいいから出し続ける。「継続」の大切さ

RY:これからの241MAGAZINEはどうなっていきたいか、教えて!

241:とにかく「続けよう」って考えてスタートしたから、やめずに発信していきたい。昔から書いて発信するのは好きで、ブログも何個か作ってきたけど、いつも更新が滞っちゃってて。

RY:昔のブログも見てたよ。あれは消しちゃったの?

241:なんかミスって消えてしまった(笑)。最初は勢いあるんやけど、この記事を出す意味とか目的とか考えてしまって、だんだん自信がなくなって。そうやって遠ざかって更新できなくなってく。昔からカウントすると、俺にとっては4回目くらいの再出発なんよね。

RY:発信し続けるのって難しいよね。

241:毎回100点に持っていくのって大変やん。でも今回はなんとか続けることだけを考えようと思ってやってきてるから、日記でも70点の出来でもいいから、とにかく出し続けようと。

RY:かっこいい。個人的な滑走記録とかも書いてるのは、あえてなんだ?

241:とにかく自分がスノーボードもサーフィンも含めて毎週めちゃくちゃやってるから、ログ残しとかへんともったいないなっていうのが先にあるけど。この記事に意味があるかとか体裁を保つとかは考えずに、とにかく今書けると思ったことを書く、て感じかな。

RY:サーフィンの記事もあるもんね。それで「横乗りライフスタイルマガジン」か。

241:そうそう。

RY:家や車のDIY記録とか、個人的なことも書いてるよね。前に「部屋のカビを撃退する」みたいな記事もあったけど、あれはどういう……?(笑)

241:それも「続ける」ためやけど、ああいう話こそ人間味が見えたりするやん。

RY:見える見える。

241:でもあの記事、何人かに面白かったって言われたよ(笑)。カッコつけず背伸びせず等身大で、っていうのは自分にめちゃくちゃ言い聞かせてる。

RY:過去のチャレンジがあってこその今なんだね。ブログでもSNSでもYouTubeでも、完璧を目指したり自分をよく見せようとしたりしてしまうと、なかなか続かないから。

241:ほんまにそう。みんなカッコつけたくなるんやけど、細々でもダサくてもいいから諦めずに続けることが大事。俺の周りでも、無名だったとこからフォロワー数増やして、ようやくスノーボードのレッスンで食えるようになってきたヤツとかいるんやけど、共通してるのはマジで無心に続けてきたヤツだけが生き残ってるってこと。

発信もスノーボードも一緒で、続けた先にしか成功はないってほんまに思う。俺は241MAGAZINEを続けていこうと思ってるから、見てくれた人も何か自分が今頑張っていることを続けてくれたら嬉しいかな。

RY:素晴らしいね。その姿勢が今シーズンのFWQ大会で成績が残せたことにも繋がっているわけだ。高まる話をありがとう!また選手としてのストーリーも聞かせてね。

【前編】「手の届く横乗りライフスタイルを伝えたい」241MAGAZINEに聞く、スノーボードメディアの今とこれから

241MAGAZINE https://241magazine.jp/

取材・文・編集 @ryokown
写真 インタビュイー提供

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