もう乗らなくなったスノーボード、どうしていますか?
「学生の頃に買ったけどもう滑りに行かなくなった」
「子どもが成長して短くなってしまった」
「十分遊んでヘタってしまった」
理由はさまざまだと思いますが、愛用していた板もいずれ廃棄するときがきます。しかしその廃棄がちょっと面倒。粗大ゴミなのか燃えるゴミなのか、分解しなければならないのか……。自治体によっても違い、調べるのが億劫でそのまま家に眠っているという人も多いかも(私もそのひとり)。
そんな使われなくなったスノーボードをDIYでリメイクして、新しい遊び道具を生み出している人たちが長野県・白馬にいました。もともとスノーボードが好きで栂池に篭もっていて、現在は白馬の入り口・大町市に住むジョージくん @active_jyouji &エリサちゃん @erisa_nfnl 。
スノーボードの板にスケートボードのトラックとウィールをくっつけるという、ありそうでなかった形。自分たちが遊ぶために作ったものが見事にハマり、初号機の制作からたった2週間で一般向けの試乗会を開催。さらに白馬村内のイベントでプレゼンする急展開に。
ReuseやRecycleなどから取って「Re:board(リボード)」と名付けられ、廃棄を減らすというSDGsの観点からも今注目の取り組みです。
きっかけは子供が遊ぶ映像
まずは実機を見てもらいたいのですが、この手前3台が「Re:board」です。初号機、2号機、3号機と、5月初旬の時点で3台を制作しています。現在はもっと増えているのですが、第一回試乗会ではこれらがお披露目されました。
こちらは2号機。廃棄するスノーボードをパウダーボードのような形にカットし、ソール側にスケートボードのトラックとウィールをくっつけています。ビンディングはそのままに、元の柄を隠すためDIY用の木目調リメイクシートを貼っています。
その元の柄というのが、写真の左端にあるようなもの。レンタルボードですら需要がなくなった古い板をもらい、加工することで息を吹き込んでいます。
「Re:board」を作ったきっかけは、子どもが遊ぶとある映像をInstagramで見たことがきっかけ。その映像では、成長してその子には短くなってしまったと思われるキッズボードをリメイクし、スケートパークで楽ぶ様子が。もともとDIYやモノづくりが好きで得意なジョージくんは、「自分で作れそうじゃん」と思ったそう。
問題は材料の調達。要らないボードを持っていなかったので、初めは安い中古ボードを買って、レディースやキッズのビンディングをつけようかと考えました。そこで「あの人がいた」と思い出し、白馬村で中古スノーボードの買取販売事業を行っている㈱モンスタークリフの佐藤さんに相談。
㈱モンスタークリフには、日本全国から中古スノーボードが集まります。中にはかなり安くしても売れない板があり、「ぜひ使って!むしろ行き場のない板があるから、これで面白いモノ作ってくれるなら最高!」と快く譲ってくれたそう。
廃棄スノーボードをもらったその日に、自宅で制作を開始。もともとDIYやバイクいじりが好きで、基本的な工具などは揃っていたそう。その日の夜には初号機が完成し、さっそく佐藤さんに乗ってもらうと「これは楽しい!」と大盛り上がり。
コンクリートの路面でスノーボードに限りなく近い乗り心地を再現し、さらに廃棄する板の再活用にもなっている「Re:board」。ここから急展開でプロジェクトとして動き出すことになりました。
県外からの参加者もいた第一回「Re:board」試乗会
せっかくだからいろんな人に乗ってもらおうと、5月の白馬で試乗会を開催すると、予想以上にたくさんの人が集まりました。なんと県外から遥々このために来てくれた参加者も。フリースタイルの試乗会で、作ったRe:board以外にも癖の強い謎ボードがたくさん……。
こちらが初号機。スノーボードの形はそのままに、トラックとウィールを付けただけの一番シンプルな形。
2号機はパウダーボード風に。柄があまりにもダサかったため「パウダーボードは木目でしょ!」ということでリメイクシートを貼りました。これの乗り心地が本当にパウダースノーを滑ったときに近いと話題に。
3号機は、ウィールの取り付け方を変えて、地面すれすれの低い形に。ハンマーヘッド型で通称「ダックスフンド」ということです。低くて安定感があるため初心者でも乗りこなしやすい。
そしてこちらが、既製品の電動スケートボード。手に持ったリモコンを操作することで自在にスピードが変えられ、最速で時速35kmほど出るというすごい乗り物。これがあることで、試乗会の楽しさが2倍に。
さらに、参加者さんのひとりが、これまたユニークな板を持参してくれました。凸凹のある道でも乗れるマウンテンボードと、なぜかBMWの面白い形状の板。
BMWのロゴ入りなのですが、これは一体……?かなり昔に購入したものだそうで、参加者一同湧きました。世の中にはいろんな板があるんですね。
それぞれ試してみたい板を手に取り、自由に滑ってもらうスタイル。スノーボードもスケートボードもまったく経験のない参加者の方もいましたが、参加者のみんながサポートしつつ、自分のペースで楽しんでもらうことができていました。
ビンディングをつけてあげたり、足のサイズによって緩衝材を入れてあげたり、ひとりひとりに合わせて楽しく滑れるようサポート。
下のほうまで降りていったら戻ってくるのが大変なのですが、この日は電動スケートボードが大活躍。紐で引っ張っていくことで、効率よく乗ってもらうことができました。
最後は全員が好きな板に乗り、みんなで下までフリーセッション。板の好みは人それぞれで、2号機が好きという人もいれば、3号機がお気に入りという人もいます。レベルやスタイルによって好みが分かれるようです。
天気にも恵まれ、素晴らしい初夏の1日となりました。いい写真!試乗会の様子は動画でもアップされているので、興味がある人は見てみてください。
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スノーボードのゴミを極限まで減らすために
「自分たちが楽しく遊ぶための道具を作りたい!」というシンプルな動機から生まれたRe:boardですが、試乗会でいろいろな新しい楽しみ方が見つかり、プロジェクトとしての可能性も見えてきました。
Re:boardの材料となっているのは、廃棄してしまうスノーボード。ウィンタースポーツ業界のゴミを出さないことを考えて事業を行っている㈱モンスタークリフでも、中にはどうしても売れず行き場をなくしている板があります。
スキー・スノーボード全盛期ともいわれるバブルの時代に作られた板は、あまりにもカラフルで子供っぽいグラフィック(柄)で、レンタルボードだとしても今は需要がないのだとか。古くなって安全性や滑走性能に問題があるならまだしも、まだまだ滑れるのに柄だけが理由で廃棄されてしまう板があるのが現状です。トレンドは恐ろしい。
㈱モンスタークリフでは、そういった板は海外に送るなどして、なんとか廃棄しないように工夫しています。使われなくなったスノーボードを活用する最後の手段としても、Re:boardに可能性を感じています。
実はスノーボードやスキーの板は、ゴミとしての処理がとても難しいことも課題のひとつ。鉄やプラスチックなど複数の素材が使われているため分別も難しく、サステナビリティの観点はあまり考えずに作られてきたためです。
自然からの恩恵を受けて遊ばせてもらうスポーツである以上、その道具の使いみちも最後の最後まで考え抜いていきたい。結果的に、Re:boardプロジェクトはそんなところにも繋がっていきました。
愛用していたスノーボードを次の遊び道具に
家で眠っているスノーボードがある人も多いはず。愛用していたマイボードに新しく息を吹き込み、また遊んでもらう手段として、板を持参してもらい一緒にRe:boardを制作するワークショップなども検討中。
子どもが成長して乗れなくなった板や、少し壊れてしまって雪上で乗るのは難しくなった板など、持て余している人にはぴったりかも。
課題となっているのは、板以外のトラックやウィールなどの材料の調達。いいアイデアがないか、白馬村内のイベントでプレゼンして募るなどして考え中です。
第2回試乗会は2022年6月11日(土)に開催決定。今後も継続開催予定のため、詳細はFacebookイベントページをチェックしてみてください!